パレスチナ承認Q&A(PLO公式HPより)

パレスチナ解放機構(PLO)の公式サイトが発表した、パレスチナの承認に関するQ&Aをご紹介します。

(原文:https://www.nad.ps/en/publication-resources/faqs/recognition-palestine)


パレスチナの人々の自決権が奪われることのないものであることは明白です。国際法や国連決議に確固たる根拠があり、その妥当性を国際的に認められています。しかし、イスラエルの占領の結果、パレスチナの自決権は数十年にわたって一貫して否定されており、国際社会はこの基本的権利を保障する責任を負いませんでした。パレスチナ国家の承認は、この権利実現への重要な一歩です。このQ&Aでは、正義・平和・安全に関するこの重要な問題を強調しています。


「パレスチナ国家はこれにより、国連憲章と決議にしたがい、平和的手段による地域および国際紛争の解決を信じていると宣言します。領土の完全性と独立を守るという当然の権利のために、パレスチナの領土の完全性または政治的独立に対する武力、暴力、テロの脅しまたは使用を拒否すると同時に、他国の領土の完全性に対する武力、暴力、テロの使用も拒否します。」

(1988年11月15日 パレスチナ独立国家樹立宣言より)


「イスラエルとパレスチナ人の間のいかなる将来の交渉も、通常のビジネスに帰することはできない。もしそうなれば、交渉は失敗する運命にある。そうではなく、新たな基盤、つまり国際法と普遍的な人権に確固たる基盤を持ち、明白な枠組みと交渉の期限についての合意をもって始められなければならない。」

(人道組織「エルダーズ」による、パレスチナ国家の承認を支持する意見文)


1、なぜパレスチナ国家を承認することが重要なのか?

パレスチナの人々の譲渡できない権利である自決権は、基本的人権であるにもかかわらず、その達成が大幅に遅れており、パレスチナ国家の承認は同権利実現への重要なステップです。パレスチナ国家の承認は、1967年の国境での二国家解決に基づく政治的解決の展望を守ることにも寄与します。占領国であるイスラエルが占領地のさらなる併合計画を進めている状況で、国際社会がイスラエルによるパレスチナの占領を終わらせるために具体的な手段をとることは不可欠です。パレスチナ国家の承認は、究極的には、平和構築の試みにおける外交や国際法、国連決議の重要性を再確認するものなのです。


2、パレスチナ国家の国境はどこか?

1988年のパレスチナ民族評議会(訳者注:PLOの立法機関)によるパレスチナ和平イニシアティブ及び国連決議67/19によると、パレスチナ国家は、1967年にイスラエルによって占領された土地、すなわち東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区とガザ地区によって構成されます。国際法の下では、イスラエルは、パレスチナ国家の土地(歴史的パレスチナの22%に相当)に対する主権を持っていません。1988年のパレスチナ独立国家樹立宣言が「歴史的妥協」として知られているのはこのためです。


3、諸国家はパレスチナ国家を承認する国際法上の権限があるのか?

あります。すべての主権国家が外交関係の行使によって他国を承認する権限を持っています。パレスチナ国家の承認は自決権達成への一歩です。すべての国家は、パレスチナの人々の基本的権利行使に対するあらゆる妨害を終わらせる義務を負っています。これは国際法の下で明白に規定されており、パレスチナ占領地における壁の建設の法的帰結に関する国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見(2004年)において再確認されました。


4、パレスチナ国家の承認は国際社会に対してさらなる責任を課すか?

パレスチナ国家の承認は諸国家に対し新たな責任を課しません。なぜなら、第三国はすでに被占領者たるパレスチナ人に対する国際法上の義務を負っているからです。例えば、ジュネーヴ第4条約の遵守を保証する義務、イスラエルによって作り出された非合法的な状況を承認せず、その状況を終わらせるための積極的な協力を行う義務などです。第三国の入植地非承認責任は、公的な取引において占領地パレスチナとイスラエルを区別するよう諸国に求めた国連安保理決議2334号よって最近強調されました。入植地に関わっている企業に関する国連データベース(国連人権理事会31/36(2016年))は、諸国が国際法の下で義務を果たすのを助ける一つのメカニズムです。

承認は確実にパレスチナと他国の間の協力の可能性を高め、間違いなく国家の制度や多国間主義、平和や外交を強化するでしょう。


5、パレスチナ国家に属する土地が占領され、さらなる併合の可能性もある現状においてパレスチナを承認することは無意味なのか?

いいえ。外国による植民的占領の存在はパレスチナ国家の存在を消滅させるものではありません。パレスチナ国家の承認は、イスラエル入植地や封鎖といった現状の承認を意味しません。むしろ、パレスチナの自決権を承認するにとどまらず、イスラエルとの最終的地位交渉において、より公平な立場にパレスチナをつかせることになります。パレスチナは外国の占領下に置かれた最初の国ではありません。フランスやポーランド、イラクやナミビアは、外国の占領下にあった時にも、国際社会によってその国家としての地位を疑問視されることは決してありませんでした。


6、パレスチナ国家の承認は、占領地パレスチナの領土のさらなる併合に関するイスラエルの発表と関連付けられるべきか?

いいえ。パレスチナの領土の併合は、最近あるいは今後のイスラエルによる発表にかかわらず、1967年のイスラエルによる占領以来続いてきたことです。例えば、1967年の戦争の直後、イスラエルは一方的にエルサレム市の境界を広げ、同市のイスラエルへの併合を正式に宣言しました。1980年には、エルサレムを「完全で統一された」イスラエルの首都として宣言した「基本法」によってエルサレムの併合が再確認されました。同様に、非合法の入植地企業の継続的な拡大と固定化も、パレスチナの人々が自決権を行使する能力を奪っていることから、パレスチナの領土の事実上の併合の進行を示すと言えます。

注目すべきは2018年7月18日にイスラエル議会を通過した「ユダヤ人国家法」です。同法はイスラエルにおいて自決権を行使できるのはユダヤ人のみであると宣言し、ユダヤ人入植地の開発を国民的価値とみなし、その建設と強化を促進し、そしてエルサレムをイスラエルの首都として再確認しました。また、同法は「イスラエルの土地」という言葉を使い、その言葉がグリーンラインを越えて占領地パレスチナにも適用されることを示唆しました。つまり、イスラエルの併合計画に憲法に基づく覆いと合法性を付与するべく設計された法なのです。

数多くの国連決議がイスラエルの国際法違反を非難し、エルサレムやシリアのゴラン高原のイスラエルによる占領を承認していないにもかかわらず、国際社会は行動を起こすことができず、イスラエルによる責任逃れを許容してきました。このことにより、パレスチナ人の自決権は組織的に否定されています。


7、現在何カ国がパレスチナ国家を承認しているのか?

現時点で、世界で最も人口の多い10カ国のうちの9カ国を含む139か国がパレスチナ国家を承認しています。世界人口の80%以上がパレスチナ国家を承認している国に住んでいるのです。パレスチナを承認している国のリストには、アラブ連盟の全加盟国、イスラム協力機構の大多数の加盟国に加え、南アフリカや中国、インド、スウェーデン、ロシア、アイスランド、ヴァチカン市国、ブラジルなど様々な国が並びます。最も新しくパレスチナを承認した国はセントクリストファー・ネイビスです。


8、パレスチナ国家の承認は和平プロセスの展望を弱体化させるか?

その反対です。パレスチナ国家の承認は和平プロセスの展望を弱体化させることはなく、いかなる和平プロセスの結果としてもみなされるべきではありません。なぜなら、承認はパレスチナの人々の奪われることのない権利だからです。意味ある和平プロセスの結果とは、2つの独立した主権国家の間に平和的な解決案を作り出すことです。パレスチナの国際的な承認が和平プロセスに悪影響を及ぼし得るというイスラエルの主張は事実無根であり、パレスチナの人々の権利の行使とその尊重を積極的に侵害し、否定するというイスラエルの公的な立場を反映しています。


9、1967年の国境に基づいてパレスチナ国家を承認することは、イスラエルに住むパレスチナ人やパレスチナ難民、ディアスポラの状態にあるパレスチナ人の権利を侵害するか?

いいえ。パレスチナ人が国家を持つという権利を行使することは、イスラエルに住むパレスチナ人が平等な自民として扱われる権利や、国連総会決議194号や包括的な和平案の一部としてのアラブ和平イニシアティブに基づくパレスチナ難民の個人の権利等、国際法の下での他の権利を侵害するものではありません。

パレスチナ国家承認 特設ウェブサイト

このサイトは日本におけるパレスチナの国家承認について、学術的な議論を元に、一般の方に向けてその意義や論点を分かりやすく伝えることを目的としています。